05
安心させたかったら。
今にも零れてしまいそうなくらいに涙を溜めた顔で、青年はいつかに男が放った言葉をなぞった。オレを安心させたかったら――その先に、どう続けたか。ちくしょう、こことぞばかりに意趣返しのつもりか。青年が何て言うかなんて、かつて言った本人である男が分からないはずはないのだ。
声が震えていた青年はそこで一度言葉を区切ったから。
半分は親切、半分は悪戯のような、意地悪な気持ちで。
「――――笑え、だろ」
ああ――そうだ、あの頃の少年は、笑うという行為が下手くそだった。
青年の意を汲み取った男に驚いたのか、あるいはあの頃の記憶を今でもしっかりと持ったままの男に何か思うところがあったのか、青年はあの頃よりもマシではあったけれど――くしゃりと、やはり失敗したような笑顔で、男を見た。
クソガキのくせに。周りの人々も似たような顔で男を見ていたから、そこでようやく、男は観念した。
――――笑え!
「ああ、笑ってやろうじゃねえか」
泣かれることが怖かった。泣かせてしまうことが嫌だった。
なら、笑え。
笑って、ただいまを言おう。
そうすれば――ほら。
皆、笑顔というにはどこか引き攣っているけれど――笑って、迎えてくれる。
「おかえり、フラウ」
完璧に作ったはずの男の笑顔も、彼らと同じように少し歪んでいたけれど、それはまさしくただの一人の人間であるということの証だった。
「――――ただいま」
